「仮説はあとから」と心得る
そうなんです。仮説とはデータから導き出した新規性や科学的意義を指すのです。批判を恐れずに断言すれば「仮説はデータ取得後に作るもの」なのです。そして「まっさらな気持ち」で自らの研究を振り返り、「自分はこの仮説を検証するために実験・調査したのだ」と全てを理解しなおすことが必要なのです。
この過程を概念的に示すと、以下の(1)から(4)の工程になります。既にデータを取得済みなので、全てはそこから出発する作業です。「材料と方法」を修正することもできません。
(1)取得データと既往研究の徹底比較
(2)取得データの考察・解釈
(3)仮説の再構築
(4)実験や調査の位置づけの再構築
一般的に論文執筆までには以下の(a)から(e)の工程を辿ると考えられています。しかし、繰り返しになりますが、そうならないことが多くて困ってしまうのです。
(a)仮説の構築
(b)仮説を検証するための実験や調査のデザイン
(c)データ取得
(d)取得データと既往研究の徹底比較
(e)データの考察・解釈
ここまでたどり着くと、もはや当初の作業仮説が跡形もなく消失し、全く別の研究に変身している可能性もあります。私はそれでいいんだと思っています。
何ら新規性および科学的意義を示さずに、「ぶっかけ実験」の結果を見せる側になるのも嫌ですし、見せられる側になるのも御免です。今の私達には「材料と方法」が全てであり「データこそが真実」なのです。折角の真実を「勿体ない論文」におとしめるのではなく、科学に貢献できる形へ昇華させたと肯定的に捉えなおすべきなのです。