【目標】優秀な卒業論文を書く

仮説は再構築するもの

研究計画の通りに精一杯データを取得し「仮説が成り立たない」となれば、やれることは限られてきます。まずは、

「実験を始める前の研究計画を全て忘れ、まっさらな気持ちでデータに向き合う」

必要があります。いつまでも作業仮説に固執している場合ではありません。駄目なものは駄目なのです。

小規模な実験を繰り返すことのできる研究分野では、作業仮説を何度も修正しては、それらを実験で検証していきます。最終的に納得のいく仮説と検証結果にたどり着いたとき、論文を執筆することになります。 しかし、研究分野の性質上、これ以上の実験や調査が困難なわけですから、作業仮説やそれを導き出した研究計画を全て忘れるしかないのです。

仮説は化けるもの

いよいよ仮説の再構築に突入します。

作業仮説を何度も修正して検証することはできませんが、本質的な思考の過程は「作業仮説を何度も修正して検証する」のと同様な経路を辿ります。ただし、実際には逆方向に経路を辿っていくことになります。つまり、

「取得したデータと既往文献のデータを徹底的に比較し取得したデータの新規性を見出す」

のです。実験や調査の過程に問題が含まれていたら論外ですが、それが科学的に十分吟味された「材料と方法」で取得されたデータであれば、作業仮説が何であろうと「データは真実」です。

また、そのデータを取得した「材料と方法」を変更することは不可能である点において「材料と方法が全て」だとも言えます。

研究分野の性質上、これ以上の実験や調査が困難なわけですから、ここは「取得したデータこそが最終的な仮説を検証した結果である」と捉えなおす必要があります。 言い換えれば「自分は『とある仮説』を検証しようとして実験・調査し、その結果として、この興味深いデータを取得したのだ」というように取得したデータを肯定的に捉えなおしていくべきなのです。

新規性の鍵は「材料と方法」

そして、ここからが仮説の再構築において最も重要な核心部分になります。

「既往文献と比較して、自分の研究の『材料と方法』のデザインは何が異なるのか?」

「既往文献と比較して、データを取得した環境条件は何が異なるのか?」

「既往文献と比較して、データを取得した技術は何が異なるのか?」

などというように「材料と方法」の視点から既往文献を調査していくのです。既往文献とは異なるデザイン、環境条件、技術で取得されたデータを「発見」できたならば、それは新規性を持ったデータになる可能性が高まります。

よく実験の再現性ということが言われます。環境条件を厳密に制御できる小規模実験ならまだしも、自然を相手にする研究で既往文献と全く同じデザイン、環境条件、技術を再現するなど不可能に近いことです。既往文献との間には必ず何かしらの違いが生まれているはずです。

違うだけではもの足りない

その「違い」に何とか気づき、そこから生み出された新規のデータについて、

「その新規性にどんな科学的意義があるのか?」

とい観点でさらに既往文献を調査していきます。実は、この作業こそが考察(Discussion)の構築に関わってくるので非常に重要かつ難しい部分です。それについては、後程、詳しく記述します。

このように取得したデータと既往文献を徹底的に比較する作業を繰り返し、データの新規性および科学的意義を何とか導き出していきます。

仮説は新知見の可能性」の段落で以下のように記述しました。

実験や調査をしてみなければわからないが、これまでに読み込んだ既往文献を素直に読み解けば、実験や調査をすることで新しい知見を導き出すことができるはず。だから「実験や調査をするんだ」ということです。

良く似通った文章ですよね?

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