統計分析報告会2020

肥料を与えたイネの収量と、与えなかったイネの収量が、それぞれ450㎏と400㎏でした。これを観察したAさんは「肥料の効果は50㎏」と結論づけました。ところが、お隣のBさんの水田では肥料効果が10㎏という結果でした。また、Aさんの水田では翌年の肥料効果が10㎏という結果になりました。

現実世界では往々にしてこのような複雑な事象が発生するため、たった1回の観察や、たった1個のサンプルから得られた観察結果を基にして、何らかの結論を得ることは大きな危険を伴います。

「??%の確率で・・・」という一定の条件がともなってもよいので、何らかの結論を導き出したいという科学的欲求を満たすために発達してきたツールが統計分析です。実験や調査の環境をどんなに制御しても複雑な事象を避けることはできません。そうした実験や調査から得られたデータを基に科学的な議論を展開するためには、統計分析の作法に則って実験や調査の全工程をデザインする必要があります。

近年、計測機器の発達に伴ってドンドン複雑な事象を計測できるようになってきました。しかし、それに比例して取得したデータ量が多くなり、その意味合いをどう解釈すればよいのか困るというジレンマが発生しています。闇雲に計測して意味のないデータを多量に取得しないようにしたり、多量のデータから何らかの意味を見つけ出すために、これまで以上に統計分析の重要度が増しています。

私達のコースでは、2年生から3年生の2年間に中島先生(生物資源経済学)が統計分析の基礎から応用までを講義します。統計分析の理論は難しく、多くの人が敬遠しがちです。しかし、生産者課題を考察し、解決策を提案するという現実世界の課題と絡めて学ぶことで理解度が格段に向上します。

実は私も今年度の全授業を受講し目から鱗が落ちる瞬間を何度も体験しました。私の学生時代、統計学を担当する教員が存在せず、事実上の不開講状態が続いていました。私の知る限り多くの大学で似たような状況が発生していたはずです。それを思うと私たちのコース生は本当にラッキーだと実感します。

報告会には、生産者の皆さん、農協の皆さん、県庁の皆さんにもご出席いただき、学生にとっては勿論、教員にとっても大きな学びの場となりました。

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