タンザニアの天水稲作

タンザニア稲作の歴史は長く,2000年前にはインド洋貿易を通じて,アジア稲(Oryza sativa)がザンジバルとキルワへ到達していたと考えられています(Carpenter, 1978; Lu and Chang, 1980).2010/2011年作期には1.4百万トンの籾を生産し,サブサハラアフリカでは,ナイジェリア,マダガスカル,マリ,ギニアについで生産量5位の地位を占めています (USDA, 2011).

ところが,コメに対する需要量は常に生産量を上回り,輸入で供給を補わなければならない事態が続いています (USDA, 2011).急激な都市化に加えて,消費者の嗜好が伝統作物からコメに移行していることから,今後10年間で生産量不足に拍車が掛かると予測されています(Senda, 1999; MAFC, 2009).したがって,食糧安保のみならず外貨保持の観点からもコメ生産量の増加が急務の課題となっています.

タンザニアの灌漑水田面積は限られており,大部分の田地が天水に依存しています(Kanyeka et al., 1995; MAFC, 2009).灌漑水田の平均収量が2.1 t/haと比較的高いのに対して,天水低湿地の平均収量は約1 t/ha,天水畑地では約0.5 t/haまで低下してしまいます(MAFC, 2009).タンザニアには,天水条件下で高収性を発揮する品種が普及しておらず,天水低湿地,天水畑地における低収性の一因となっています.タンザニアでは,多くの天水稲作農家が130~160日で収穫可能な晩生品種を栽培します.例えば,天水低湿地で栽培されるSupa IndiaやKilomberoは140~160日で収穫され,天水畑地で栽培されるMlimaniやSalamaは130~140日で収穫されます (FAO, 2002).

タンザニアの降雨は二峰性(bimodal)と単峰性(unimodal)に大別されます.二峰性降雨分布は3月~5月(3ヶ月)までの大雨期と10~12月(3ヶ月)までの小雨期 からなり,単峰性降雨分布は12~4月(5ヶ月)までに大雨期があります.通常,天水イネは大雨期に栽培されます.しかし,在来品種は栽培期間が長いため,しばしば生育の終盤に雨期が終了して水不足により減収してしまいます.したがって,天水条件下でも生育する早稲品種を導入すれば,タンザニアのイネ生産量を増加するはずです.

引用文献

Carpenter, A. J. 1978. The History of Rice in Africa. In I. W. Buddenhagen, G. J. Persley eds., Rice in Africa. Academic Press, New York. 3-10.

FAO. 2002. FAO Rice Information.

Lu, J. J. and Chang, T. T. 1980. Rice in its Temporal and Spatial Perspectives. In B. S. Luh ed., Rice: Production and Utilization. AVI Publishing, Westport. 1-74.

MAFC (Ministry of Agriculture Food Security and Cooperatives). 2009. National Rice Development Strategy.

Kanyeka, Z. L., Msomba, S. W., Kihupi, A. N. and Penza, M. S. F. 1995. Rice ecosystems in Tanzania: characterization and classification. Rice and People in Tanzania. Kilimanjaro Agricultural Training Centre, Moshi.

Senda, M. 1999. Rice marketing system in Tanzania. Miss. Pub. Chugoku Natl. Agric. Exp. Stn. 32: 1-83.

USDA. 2011. Production, Supply and Distribution Online.