Morogoro rural

2009年6月14日

Kilombero農業研究研修所(KATRIN)の実施するNERICA栽培試験を視察した際に農家が栽培するイネ品種と品種に対する農家の印象を尋ねた.

<農家栽培品種と品種に対する農家の印象>

UplandSUPA,Rangimbili:良食味、他の種がない,Uplandで栽培,自家消費のみ

(これまでに栽培した品種)Mlekealongole、Lunyuki、Nyati、Karafu、Ebo、Twena bwana、Faya mpemba、Tuluki

SUPA Mbawana 2:良食味

Mary:良食味、高収量、早生

Mwangulu:良食味、高収量、晩生、Kyelaの農家から入手

Lunyuki:低食味、高収量、早生、全て自家消費のみ

SUPA India:良食味、市場競争力がある、見た目がよい→一部を販売

Afa Mwanza:高収量、大穀粒,自家消費のみ

Mgombe:早生,自家消費のみ

(これまでに栽培した品種)

Rangimbili、Limotabaha:両品種とも乾燥耐性

(Mr. Fundiにとっての食味ランキング)

Limotabaha<NERICA 1<SUPA India<NERICA7

Kalimata、Unguja:良食味、高収量、乾燥耐性→販売、自家消費

(これまでに栽培した品種)

SUPA India、Afa Mwanza、Mgombe、Kisaki

(Mr. Fundiにとっての食味ランキング)

Kisaki<Kalima<Unguja<NERIC7

2010年10月19日~20日

<Morogoro県庁>

District Agricultural and Livestock Development Officer(DALDO)代理とCrop Officerに面会。農業省発出のNERICA研修紹介レター、NERICA研修概要書、予算書を手渡した。Ilonga農業研修所とMorogoro県の事前交渉で既に研修対象村の選定まで終了していたことから、面会時には、中核農家選定および研修費用の分担を依頼するだけで済んだ。ただ、District Executive Director(DED)とは面会できなかったため、経費分担について議論を進めることはできなかった。そこで、今後は、Ilonga農業研修所が経費について交渉を継続することで合意した。

<Kiloka灌漑地区>

小雨期の降雨が全くなかったために水源が枯渇し、移植したイネも枯死寸前の状態になっていた。そんな中でも懸命に除草する農家の姿は痛々しく、ただただ小雨期の到来を祈るばかりであった。

<Kibangile村>

この村はKATRINの実施したNERICA栽培試験の試験地の一つであり、既にNERICA栽培経験を持つ農家もいる。訪問時、試験参加農家の一人(Mr. Ngonge,2009年6月14日報告参照)が、試験以来、自主的に継続栽培しているNERICA種子を披露してくれた。村普及員によれば約80haに陸稲が栽培され、LunyukiとMlekealongole(早生品種)が一般的であるが、ネリカはMlekealongoleよりも生育期間が短く、農民たちは注目しているようだ。Morogoro県は当地区の陸稲栽培農家をNERICA研修に参加させる予定だという。彼らが中核農家に選出されれば、普及効果も増大することが期待される。「研究-研修-普及連携」の一事例となり得るかも知れない。

<Mbalangwe灌漑地区>

JICAが実施するもう一つのプロジェクト(県農業開発計画灌漑ガイドライン策定・訓練計画)のモデル地区として灌漑設備を建設した地区(末端幹線水路は建設継続中)である。Morogoro県は当地区での稲作農家研修をIlonga農業研究研修所に依頼した.訪問時,研修教官がベースライン調査を行っていたことから、その様子を視察することにした。Mahande灌漑地区に次いで 県農業開発計画灌漑ガイドライン策定・訓練計画(ハード)とタンライス(ソフト)の活動が連携する好事例と言える。Kiloka灌漑地区と同様に、当地区でも水源が枯渇していた。「川が干上がったのは初めてだ」という灌漑担当官や村人の言葉に、気候変動を身近に感じた。

2011年6月15日

Morogoro県のNERICA農家圃場を視察した.NERICA研修では,各県から4村を選抜し,各村から4中核農家を招集したため,4村×4中核農家=16中核農家が研修に参加した.各中核農家は,3中間農家に種子を配布し栽培法を指導するため,各県で4村×4中核農家×3中間農家=48中間農家が誕生する.したがって,今作期には各県で16中核農家+48中間農家=64農家がNERICAを栽培することになる.普及員によると,Morogoro rural県では,様々な理由により7中間農家が栽培を途中放棄し,57農家(Kiroka村:13農家, Kibangile村:15農家,Gozo村:13農家, Kizwila村:16農家)がNERICAを栽培した.今回は,57農家のうち12農家のNERICA圃場を視察することができた.山口大学 荒木准教授と当県を訪問した際には,雨不足で若苗が乾燥ストレスに晒されていた.干害による不作を心配したが,間もなく本格的な雨期を迎え,順調に生育しているとの情報を得た.果たして,収穫期を迎えたNERICAは,どの農家圃場でも目を見張るほどに大きな穂を付け,順調に生育したことを裏付けていた.2.0~4.0t/haの収量を見込めるのではなかろうか?全農家が無施肥で栽培したことを考えると,抜群の好成績だったと言える.ある普及員は,「周辺農家の間でNERICA種子への需要が高まっているものの充分に対応しきれないため困っている」と嬉しそうに話していた.多くの農家が,NERICAの早生性と高収量性を非常に高く評価していた.また,数件の農家は既にNERICAを食したようで,香りや味についても高く評価していた.他の品種に比べ,炊飯時に粒が良く膨らむことも高評価に値するという.これらの農家は穂刈りで収穫したようだが,その後に発生するひこばえで再度収穫できるのも利点だと言っていた.

<中核農家1>

Kiroka村は平坦な土地が少なく,ほとんどの農家が斜面で作物を栽培する.イネも例外ではない.斜面で栽培されたNERICA1が旺盛に生育していた.これぞ陸稲という風景であった.

<中核農家2>

中核農家1の圃場から約100m上に位置する急斜面で,NERICA1が旺盛に生育していた.案内されるままに登ってしまったが,あまりにも急傾斜であるため,身の危険を感じるほどであった.こうした場所に生きる農家の苦労には頭が下がる.

<中核農家3>

Kiroka村奥地の中核農家.今回は,遠距離のために訪問できなかったが, NERICAが順調に生育したことを写真で確認できた.あまりにも旺盛に生育するNERICA1に興奮し写真を撮影したらしい.

<中核農家4>

Kibangile村の入り口付近で旺盛に生育するNERICA1.幹線道路沿いに位置するため,往来する農家からNERICAについて頻繁に質問を受けるらしい.背後の山から下りてくる猿の食害に困っていた.

<中核農家5>

この農家はKATRINの実施したNERICA農家圃場試験にも参加した.NERICA栽培は今年で4年目になるが,今年の成績が最高だと自信満々に圃場を披露してくれた.裏山からの流水で土壌が湿り,別圃場の遅植えNERICAも順調に出穂期を迎えていた.NERICA1に粒色が酷似した草丈の高いKarafuuという在来品種も栽培.試験で配布された雨量計を使い,継続的に降水量を記録していた.非常に探求心の強い農家である.

<Kibangile小学校>

中核農家5は,試験以来増やしてきたNERICA1種子を小学校に供与し,児童と一緒に種子を増産していた.収穫物の一部は児童が食べ,残りは種子として父兄に配布するらしい.

<中核農家6>

Gozo村のNERICA圃場.本圃場のNERICAは,今回訪問した農家圃場の中で最も良く生育していた.本圃場は幹線道路沿いに位置し,Tanzania Agricultural Partnership(TAP)が設置したトウモロコシ展示圃場にも隣接する.このため,非常に良く目立ち,周辺農家の注目を浴びている.県政府関係者で構成された視察団がTAP展示圃場を訪問した際,隣接圃場のNERICA生育に驚いていたそうだ.求めに応じて,急遽,この中核農家が視察団に対しNERICAについて解説したという.

<中核農家7>

Kiziwila村のNERICA圃場.従来の作付体系では,在来品種が晩生のため,Vuli(小雨期:11月~2月)に播種しMasika(大雨期:3月~6月)に収穫するしかなかった.ところが,早生のNERICA1を導入することで,Vuliにトウモロコシを栽培し, Masikaにイネを栽培する2毛作が可能となった.普及員によれば,この2毛作を見た周辺の農家が「NERICA種子を配布しなければFarmer Field Schoolには参加しない」と大まじめに口走り始めているそうだ.

<中核農家8>

Kiziwila村の圃場で旺盛に生育するNERICA1.

<中核農家9>

Kiziwila村の圃場で旺盛に生育するNERICA1.

<中間農家1>

Kiroka村の中間農家は既に収穫を済ませていた.荒木准教授と訪問した際,サイホンで小川の水を灌水しても蒸発に追いつかない状況で,4~5葉齢の植物体が水不足で萎れていた.このため,好成績を期待せずに訪問した.しかし,農家の話を総合すると,4~5t/haの収量があったという.中核農家3の撮影した出穂期頃の写真を見ると,荒木助教と訪問した同じ圃場とは思えないほどに草勢が回復していた.また,落ち穂の粒数はかなり多く,登熟歩合も悪くなかった.5t/haの収量は大袈裟かも知れないが,2~3t/ha収量の可能性は大いにあり得る.この圃場の成績は,NERICAが強い耐乾性を有することを示しているのかも知れない.さらに,この農家はNERICAのひこばえ能力を高く評価し,次作からは,ひこばえでも収穫してみたいと意気込んでいた.

<中間農家2>

Kibangile村の中間農家圃場.中核農家3の指導を受け,NERICAは非常に良く生育していた.

<中間農家3>

Kibangile村の中間農家圃場.中核農家3の指導を受け,NERICAは旺盛に生育していた.

<中間農家4>

Gozo村の中間農家圃場.NERICAは旺盛に生育していた.