Monduli

2010年3月10日

山口大学 荒木准教授とMahande灌漑地区を訪問した.訪問時,多くの圃場で耕起,代かき,均平,移植が行われており,灌漑地区全体に活気が満ちていた.移植された苗はいずれも直線植えになっており,タンライス研修の効果が着実に浸透していることを伺わせた.Mahande灌漑地区では水不足のため,「本田準備」と「移植」を行う圃場へ優先的に水を供給し,移植後の圃場は7~10日毎に水を供給することで合意しているそうだ.しかし,合意に従わず,ポンプで揚水しようとする農家や水門を勝手に開いて導水しようとする農家があり,Scheme managerは対応に苦慮していた.

そんな中,水不足に対処する非常に面白い栽培法を試みる農家がいた.Mahande灌漑地区では,通常1月半ばに播種し2月初旬に移植する.しかし,近年,代かきや移植時に十分な水を確保できないため,苗立ち不良による減収が頻発するようになった.また,両作業の労賃が生産コストに占める割合は非常に大きい.そこで,この篤農家は,周囲の農家がマメ科作物を栽培する11月~12月の少雨時に『直播』することで,大量の水を使用せず生産コストを削減しようとしているのだ.マメ科作物は大量の灌水を必要としないため,イネの苗立ち期に生育に十分な水量を確保することができる.また,通常ならば代かきと移植に利用するはずの大量の水を栄養成長期の灌水に利用し,分茎数を増加させることもできる.その結果,昨年度は通常の栽培法を実践した他農家よりも収量が高くなったそうだ.直播は雑草が出やすいため除草に労賃が掛かってしまうものの,代かきと移植の労賃に比べれば大幅に抑えることができる.この結果は大きな反響を呼び,直播栽培を実践する他農家も出てきたと言うことだ.訪問時,他圃場に比べて直播圃場のイネは多くの分茎を確保し,根張りも旺盛であるように見えた.水不足への一つの対処策として一考に値する栽培法だろう.