Bagamoyo

2010年6月17日

BagamoyoのNERICA農家圃場を視察した.普及員によると,Bagamoyoでは,47農家(Kondo村:16農家,Fukayosi村:6農家,Matimbue村:16農家,Kidogozero村:9農家)がNERICAを栽培した.今回は,奥地のKidogozero村を除く3村を訪問し,9農家圃場を視察することができた.Bagamoyoに対する研修は雨期直前に急遽決定したため,実際の研修は雨期に突入した3月10~11日に実施された.その結果,中核農家が中間農家を指導し,皆が播種する頃(3月20日~4月20日)には本格的に雨期が始まっていた.Bagomoyoでは,ZanzibarやTangaと同様に,イネは集水地としての谷地田(Inland valley)に栽培される場合が多い.その先入主のせいか,多くのNERICA圃場が谷地田に設けられ,播種直後に圃場が降水で冠水したという.そうした圃場では,欠株が多く,植物生育も阻害されていた.逆に,苗立ち期に冠水を免れた圃場では,その後に冠水しても植物生育が良好であった.これまで幾度となく観察してきた通り,NERICAは苗立ち期の冠水(湛水ストレス)に弱いのであろう.Fukayosi村では,他村よりも降水量が少なかったらしく,干害が発生していた.栽培を諦める農家が続出し,参加農家数が最も少なくなったという(近接した地域でも降水量が大きく異なるのはアフリカの一特徴である).NERICAを栽培した農家は,播種時期が遅いにも拘わらず短期間で成熟するNERICAの早生性を高く評価していた.


無肥料で栽培された天水畑地のNERICAには窒素・リン酸欠乏症状が出ており,収量は1t/haを下回ると予想された.周辺のトウモロコシや雑草にも同様に欠乏症状が出ていた.Bagamoyoに広がる砂質土壌は,有機物も少なく,養分保持能が低いのかも知れない.ところが,畑地に栽培された在来イネ品種には養分欠乏症状が出ているにも拘わらず,谷地田の在来イネ品種には欠乏症状がなく,3~4t/haの好成績が見込まれた.周辺の丘に降り注いだ雨は,養分を溶かし込見ながら谷地田に集水するため,谷地田土壌は充分な養分を含んでいるのかも知れない.この仮説が正しいとすると,Bagomoyoのように貧栄養土壌が広がる地域でNERICAを普及する場合,天水畑地ではなく谷地田のような天水低湿地で栽培することを推奨する必要性があるだろう.ただし,前述の通り,NERICAは苗立ち期の冠水に弱い.したがって,移植等により苗立ち期の冠水を避ける技術も同時に推奨する必要がある.

<中核農家1>

Kondo村の中核農家圃場.天水畑地.多くの粒数を確保しているものの,登熟歩合が低く,2t/ha前後の収量ではないだろうか?

<中核農家2>

Kondo村の中核農家圃場.天水田.湛水条件で旺盛に生育し,3.5~4t/ha収量を見込めた.播種後,約2週間に渡って降水がなかったため,苗は冠水することなく順調に生育したらしい.

<中間農家1>

Kondo村の中間農家圃場.不均平な天水田.湛水しやすい低地部分に欠株が多く湿害を疑わせた.同一圃場内の高地部では,1.5t/ha前後の生育を示していた.

<中間農家2>

Fukayosi村の中間農家圃場.水不足で多くの農家が脱落.この圃場では一部NERICAが出穂.中間農家と普及員は,NERICAの早生性と耐乾性を高く評価していた.普及員は,当村で実施予定の共同圃場事業(約20ha)でNERICAを栽培したいと語っていた.そこで,Ilonga農業研修所から種子を購入するように勧めておいた.

<中間農家3>

Matimbue村の中間農家圃場.谷地田.湛水しやすい低地部分に欠株や生育阻害株が多く湿害を疑わせた.同一圃場内の高地部では,2t/ha前後の生育を示していた.

<中間農家4>

Matimbue村の中間農家圃場.天水畑地.養分欠乏で植物体が黄色になっていた.

<中間農家5>

Matimbue村の中間農家圃場.谷地田.湛水しやすい低地部分に欠株や生育阻害株が多く湿害を疑わせた.また,一部の苗は表面流水に押し流されたそうだ.

<中間農家6>

Matimbue村の中間農家圃場.天水畑地.窒素・リン酸欠乏症状が出ており,大きく生育が阻害されていた.0.7~0.8t/haほどの収量であろう.隣接圃場の在来品種SUPAにも同様の症状が出ていた.

2011年8月31日

Bagamoyo灌漑地区を訪問した.