入学の季節です。
高校から大学へ進学すると、世界が大きく広がるというようなことを言う人たちがいます。歳を重ねて経験の量が増えるという意味では、確かに世界が徐々に広がるかも知れません。しかし、同質な集団を抽出するための日本の入試制度の下では、多様な経験や考え方を持った同世代の仲間と接する機会が減るため、逆に世界が狭くなるという可能性を否定できません。大学生活を過ごす学生たちにとっては私の考え方がしっくりこないかも知れませんが、はるか昔に大学を卒業し様々な経験を積んだ大人たちの多くが学生に対して同様な印象を抱いているはずです。
都心の大学であれば、比較的広範囲な地域から学生が入学してきたり留学生の数も多いため、多少は多様性が生まれるてくるかも知れません。そうした環境に身を置くことが自身の能力を向上させると信じ都心の大学を目指す高校生も多いことでしょう。都心の大学と比較すると、残念ながら三重大学の「キャンパス内」において多様性が生まれる可能性は低いことを認めざるを得ません。しかし、それは視点を「キャンパス内」に限定した場合に三重大学の多様性が低いということなのであって、地域社会と密接につながろうとする三重大学には都心の大学では絶対に達成しえない多様性に触れる機会があると私は常々考えています。
高校生と一緒に研究プロジェクトを推進するなどは、なかなか体験することのできない多様性に触れる機会の一つです。大学生は研究室で学んだ知識を高校生に教えることを通じて自ら何かを学ぶことでしょう。一方、この高校生たちは六次産業化で大学生の遥か先を走っている集団ですから、逆に高校生の活動から大学生が大いに学ぶことでしょう。
栽培したコメは、地域の酒蔵によって清酒に醸造され、地域の酒店を通じて全国へ出荷されます。地域社会で進行するビジネスの一端に触れることでも大いに勉強するでしょう。三重大生には是非その幸運を享受して欲しいと思います。
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