市場志向型

市場志向型研究
タンザニアの持続可能なイネ生産に向けた挑戦
市場志向型の研究アプローチがもたらすブレークスルー

タンザニアの食料安全保障および経済発展における稲作の重要性が高まる中、イネ研究の在り方が問われています。従来の生産性向上を重視した研究アプローチでは、消費者ニーズとの乖離が指摘されており、研究成果の現場への普及が課題となっています。

私たちが発表した総説”Importance of market-oriented research for rice production in Tanzania. A review”は、こうした問題意識から、マーケット志向のイネ研究の重要性を説いた画期的な論文です。本論文では、バリューチェーンの各段階における関係者へのヒアリングを通じて、消費者の選好に影響を及ぼす要因を明らかにしています。食味、価格、ブランドイメージなど、市場性に直結する要素を考慮に入れた研究アプローチの必要性を訴えています。

また、本論文では、マーケット志向の視点に立った育種研究および栽培研究の方向性が示されています。育種研究では、消費者の嗜好に合った形質を重視した品種開発や、在来品種の市場価値を高める取り組みの重要性が指摘されています。栽培研究では、コストパフォーマンスに優れた技術体系の確立や、商品価値に直結する病害虫管理、収穫後処理技術の改善が求められています。

加えて、本論文は、研究成果の現場への普及における農家との協働の重要性を強調しています。実証試験や技術交流、普及活動を通じて、研究と生産現場の橋渡しを進めることが肝要だと訴えています。

本論文は、イネ研究者のみならず、農業政策立案者、農業普及員、NPO関係者など、タンザニアの稲作セクターに関わる全ての人々に一読をお勧めしたい論文です。マーケット志向のイネ研究の重要性を多角的に論じた本論文が、タンザニアのイネ研究と稲作の発展に大きく寄与することを確信しています。