土壌と有機物からの窒素供給

地域の課題は世界の課題

古来「コメ作りは土作り」と言われ、農家は家畜糞尿や里山の腐葉土を投入することで水田の地力を維持してきました。現在、基幹的農業従事者への農地集積が着々と進んでいます。そうした大規模稲作においては、化学肥料投入を前提として技術体系が構築されています。しかし、近年、水田における有機物投入量の減少が地力低下を引き起こしている事例が全国で報告されています。先人に倣って有機物投入量を増加させたいところですが、1人あたり数㌶以上を耕作する状況では、きめ細かな土作りが困難になっています。現在、主食であるコメを将来に渡って安定的に国内自給できるよう、大規模稲作の持続性を担保する技術、特に省力的に地力を維持する技術が求められています。これは国内にとどまらず世界共通の大きな課題でもあります。

私達は、作物生態生理学を基礎に異分野の知見も融合しながら、省力的な地力維持技術の開発に取り組んでいます。私達は、地域の課題を世界規模の課題として捉え、成果を発信していきます。私達は、責任を持って地域の課題へ取り組むため、地域の皆様と連携しながら研究を進めています。連携を通じて現実に根差した研究課題を選択し、成果を活用して頂くことが可能になります。比較的短期間の間に課題発掘から成果活用までを経験できることは、実践力を養う教育の場として大いに活かされています。

地力の広域空間分布

私たちは、京都府与謝野町の水田地帯で、土壌の窒素供給力(地力)の空間的な関係性を解析しました。その結果、水田は地形や水系を通じて相互に影響して地力を変動させている可能性が示されました。この発見は、持続可能な水田農業には個別管理よりも地域レベルでの共同管理が有効である可能性を示唆しています。

ドローンによる倒伏推定

私たちは、ドローンによるリモートセンシング技術を用いて、コシヒカリの倒伏リスクを予測する手法を開発しました。土壌中の可給態窒素量が多い場所で倒伏が発生しやすいことを明らかにし、適切な施肥による倒伏軽減の可能性を示しました。本研究は、スマート農業におけるドローン活用の重要な成果と言えます。

【講演】土壌肥料学会中部支部

私たちは、気候変動下における持続可能な稲作の確立を目指し、作物学、土壌学、微生物学、食品化学など多岐にわたる研究アプローチで取り組んでいます。近年、記録的な猛暑や、有機農業への転換の必要性など、コメ生産には新たな課題が次々と生じています。私たちは8年間にわたり農家の方々と共に試行錯誤を重ねることで、実践的な解決策の創出を目指してきました。

【掲載】四谷学院

四谷学院から取材を受け、「化学肥料に依存しない作物生産技術を開発し未来の食糧生産や人類の生存に貢献する」と題して、私たちが取り組む地力研究について紹介しました。

【連載】農業共済新聞

農業共済新聞の連載企画で、土壌からの窒素供給の重要性について解説しました。

【掲載】朝日新聞

与謝野町で開催されたシンポジウム「与謝野のコメの未来を考える」で、私たちが与謝野町内で実施してきた地力調査や豆っこ肥料の肥功長の結果について報告。その様子を朝日新聞に報道して貰いました。

【掲載】与謝野町役場HP

与謝野町役場の「YosanoAgicycle」で特集されています。