Indonesia

【バイオエタノール】

化石燃料の枯渇に対する懸念やCO2排出量の削減を目的にバイオエタノールの生産量が増加しています.バイオエタノールは食用作物の糖やデンプンを原料とするため,「食糧を犠牲にした燃料生産だ」と批判されています.そこで,非食用のセルロース系バイオマスからのエタノール生産が各地で試みられています.私は「セルロース系エタノール革新的生産システム開発事業(NEDO委託事業,2009~2014)」に携わりました.

成果:セルロース系バイオエタノール原料作物の研究戦略

【原料作物の栽培】

原料作物を栽培し,エネルギー消費とCO2排出量を抑制しながら,安定的に原料を工場へ供給する技術が模索されています.農地の犠牲を避けるため,非農地でも旺盛に生育する多年生の草本植物種が有望視されています.私達はGIS解析によりインドネシアのランプン州に栽培に適した非農地が多く存在することを突き止め,圃場試験によりエリアンサスとネピアグラスを栽培種として選抜しました.

成果:Identifying potential field sites for production of cellulosic energy plants in Asia

条抜き多回刈り試験

ネピアグラスを4 ヵ月毎に全刈りした場合,年間 45~50t のバイオマスを収穫可能であるが,2 ヶ月毎に 4 条おきで刈取る「条抜き多回刈り」によってバイオマス収量が 1.6 倍に増加しました.

成果:Effects of partial harvesting on Napier grass: reduced seasonal variability in feedstock supply and increased biomass yield

【原料作物栽培と根系】

原料作物栽培では,地上部全量を原料として刈取ってしまいます.収穫残渣を土壌へ還元しないため,土壌の肥沃度や保水性が低下し,栽培の持続性を担保できない可能性が指摘されています.しかし,根系から土壌へ供給される炭素量が十分に多ければ,収穫残渣や堆肥などの有機物を還元しなくても,土壌の生産性を維持できるかも知れません.また,非農地は,養水分欠乏や過湿などのストレスを抱える場合が多いと言われます.原料作物の根系がストレス耐性を保持していれば,エネルギー消費を伴うストレス軽減技術が不要になるでしょう.

原料作物栽培では根系が重要な役割を担うにも拘わらず,これまで情報が全く蓄積していまでした.そこで私達は,NEDO委託事業でエリアンサスとネピアグラスの根系を調査し,以下に示す成果を得ました.それらの成果は,非農地を利用した原料作物の栽培システムを提案する際の重要な基礎情報となりました.

成果:Distribution and quantity of root systems of field-grown Erianthus and Napier grass.

成果:原料作物のエリアンサスとネピアグラスの根

根系調査

<塹壕掘削>

<土壌コア挿入>

<土壌コア掘り出し>

<根系洗い出し>

廃鉱山での原料作物栽培試験

エリアンサスとネピアグラスは鉱山跡地でも栽培可能で,栽培により土壌流亡を抑制し,土壌炭素濃度を増加させることが可能であることを示しました。

成果:Cultivation of Erianthus and Napier Grass at an Abandoned Mine in Lampung, Indonesia